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世の中の不思議な縁と、杉本一文氏のトークショー

実家の整理に行く身が、
急きょ。隅田川の川風の薫る浅草橋へ。

某方面からのお誘いを受けたのだ。
行き先は、夜想のギャラリーとして知っている人も多い、
パラボリカ・ビス。

   ↓

http://www.yaso-peyotl.com/archives/2010/07/post_786.html


アスファルトから照り返す熱気が桐下駄の底を焦がすような真昼であった。

銅版画の展示会が行われていた。
それに合わせて、「杉本一文」氏のトークショーが行われた。

角川文庫の「横溝正史」シリーズの表紙で名高いデザイナー兼イラストレーター兼銅版画師である。

(ああ、ごめんなさい、横溝正史は一般教養程度にしか読んだ事が無いのです、
存じ上げませんでした)

が! 横溝正史シリーズ以外の作品、つまり、銅版画を見るにいたって、
「存じ上げず失礼いたしました」ではない事を思い出した。
「御作品は存じ上げております。お会いできて大変光栄です」だったのだ。

ご記憶の方も多いであろう。
私が「故・山本六十三」氏と「アルフォンス井上」氏の銅版画に、
身分不相応な大枚を注ぎ込み、
「入れ揚げるなら他人の作品にではなく、自分の作品にしろ!」と、
諸方面からお叱りを受けた事件。

まったく、もっともなお話である。

その時期、銀座のスパンアートギャラリーで
   ↓
http://www.span-art.co.jp/index.html
見た、残部希少の銅版画集。

「杉本一文銅版画集」。

おおっと!

横溝正史シリーズのイラストレーター様と同一人物であったのか!

会場は沢山の人が詰めかけ、熱気に汗が腕を伝う有り様。
杉本氏の人柄の良さそうなお話しぶりを聞く内に、
身の内に、視覚表現への意欲が剣呑な様子で身をもたげた。


ところで!
他の作品も好印象の物が多かったが、
このトークショーで驚いた事は!!!!!!!

スタッフが古書を段ボールで持ち込み、
(つまり、杉本一文氏の表紙のものは絶版になっているため古書しかないのだ)
お客が好きな本を選んで、
杉本一文氏にサインをもらえる上にツーショットを撮ってくれるのだ!!!!

入場料はワンドリンクオーダーだが、
最後のそれは、無料企画。

スタッフのこまやかな心遣いに衝撃を受け、
表紙が素晴らしい「獄門島」を手に取ると、
有り難くサインを頂いた。

またここで、
「こら〜、他人様にサインを頂いている場合か!」と
諸方面からお叱りを受けそうだが、

このサインは、

急きょ声を掛けて下さった某氏、

こまやかな心遣いに満ちたスタッフ兼作家の皆さん、

ぎすぎすした世間を一時忘れさせてくれたトーク振りの杉本一文氏、

この時間のすべてに対する敬意、

そして、突然銅版画作品を見て思い出した別の時間の別の出会いの不思議さ、

すべてに対する敬意として、お願いし、大切に持ち帰ったのだった。

ありがとう、杉本一文先生、そして関係者の皆様。

その後、謎の無政府主義者風某氏と、
イザベラ・バード著の【日本奥地紀行】に描かれた浅草を散策し、
川を下って臨海副都心部の海際に出る予定だったのが、
不思議な成り行きで不思議な話へと続いたのだった。

イザベラ・バード著【日本奥地紀行】に関しては、また後日。
by leea_blog | 2010-07-19 01:41 | Comments(2)
Commented by 木魚庵 at 2010-07-19 16:28 x
トークイベントで杉本先生のお話の引き出し役をつとめさせていただいた者です。
最後までご参加いただきまして、ありがとうございました。
「獄門島」にサインをいただけたようで、古本を用意した甲斐がありました。
これを機会に、横溝正史の本を読み返していただけると嬉しいです。
Commented by leea_blog at 2010-07-19 21:56
木魚庵様
「金田一耕助博物館」の館長様でいらっしゃっしゃる。
トークショーは引き出し役の力量や呼吸で、面白くもつまらなくもなります。
横溝正史ワールドに疎い私が楽しめたのも、木魚庵さんのお力です。
古書のご用意、サイン会、この暖か過ぎるサービスに、感動しました。
何かと余裕の無い私は、多いに見習いたい所です。
関係者の皆様へもどうぞよろしくお伝え下さい。
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