【日本奥地紀行】 (イザベラ バード 著、高梨 健吉訳/平凡社ライブラリー) を読んでいる。
主に電車の中でのため、少しずつしか進まない。 一気に読み飛ばすより、視点や表現をじっくり味わい、まな裏に明治初期の、初めて外国人の目に触れる日本の光景を広がらせつつ読む本だ。 裏表紙の紹介文。 【文明開化期の日本…。イザベラは北へ旅立つ。本当の日本を求めて。東京から北海道まで、美しい自然のなかの貧しい農村、アイヌの生活など、明治初期の日本を浮き彫りにした旅の記録。】 江戸時代から明治になり、欧米に追いつこうと急ピッチで改革が行われている最中の、日本。 条約で開かれた港はまだわずか。 ラフカディオ・ハーンの文学性抒情が溢れてこぼれる文章と異なり、 イザベラ・バードの視点は冷静沈着、上から目線である。 あまりにありのままの感想を書き過ぎて、当時の日本人や日本支援者が、「陳謝を要求したい」と思うだろう点も、理解した上での記述である。 初めの方に出てくる日本食の記述を引用しよう。以下。 ------------------------------------------------------ 「日本食」というのはぞっとするような魚と野菜の料理で、少数の人だけがこれを呑み込んで消化できるのである。これも長く練習を積まなければならない。 -------------------------------------------------- 江戸〜明治初期の日本食が、現代日本の日本食とは大きく異なっていたとしても、 露骨なまでに「自国中心」の視点である(笑) イギリスは、私は出かけた事が無いので評する権利は無いのだが、 ヨーロッパ文明の中でもとりわけ、「味覚」が鈍感でイギリスの料理はまずい、と名高い国である。 そんな英国の女性から上記のような失礼な日本食評を頂いては、むっとするより、 むしろ斬新な気分になる。 一方で、当時の日本人達は、様々な文献にもあるように、大変誇り高く、外国の文化水準をうらやましく思いつつも習慣は蛮習と考えていた。 さて、現代ならともかく、当時の日本を、ガイドブックも無しに「人の通らぬ道」を敢えて選びながら、 観光地より「奥地」を旅するご婦人。 彼女の眺める物、考える事、美しいと感じる事が綴られた分厚い新書判のこの本が、面白くない訳は無い。 そうした視点に同道する事は、すなわち、【現在の日本】を平坦な視線で見ない事につながり、自分たちが見る事の無いであろう未来の時間まで、照射する力を得るのである。
by leea_blog
| 2010-09-02 22:28
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Comments(4)
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《ぬえ》
at 2010-09-06 20:17
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りーあさん、おひさしぶりです。
イサベラ・バードをお読みになったなら、これも良いですよ。私には目から鱗ぼろぼろでした。 http://www.amazon.co.jp/%E9%80%9D%E3%81%8D%E3%81%97%E4%B8%96%E3%81%AE%E9%9D%A2%E5%BD%B1-%E5%B9%B3%E5%87%A1%E7%A4%BE%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%BC-%E6%B8%A1%E8%BE%BA-%E4%BA%AC%E4%BA%8C/dp/4582765521/ref=cm_cr_pr_product_top
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leea_blog at 2010-09-06 21:44
ぬえさん、お久しぶりです〜
『逝きし世の面影』! おお。確かに面白そうな!!!!! 目からうろこがそんなに落ちるとは。良い本を教えて下さり感謝です。 【イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む】宮本 常一著も買って有るので、それが終わったら読んでみます〜。
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ぬえ
at 2010-09-07 22:27
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イザベラ・バードの本だと、日本の馬は全然使い物にならないとか言われてますが、「逝きし世の面影」にはそのあたりの謎解きも出てきます。この本には色々印象的な話が沢山書かれていますが、なかでも江戸の農家が屋根に植物を植えて美しさを競ったなんて話もいいですよー。
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りーあ
at 2010-09-08 21:19
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それはかなり興味深いですね。
ラフカディオ・ハーンの【日本の面影】にもそう言った話が多数出てきますが、ほんの百年かそれくらいで、かなりのもの(風習、考え方)が、逝きて帰らぬものとなりました。 石油富豪の中東の国の使い捨て行為を、愚かな行為と笑っていたワタクシの世代も、いまや使い捨て世代に。 そして、急速に『エコ』意識が広がり、、、、、。 色々考えさせられます。
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