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父と子と精霊のみ名において

メリークリスマス。

 キリスト教徒でも何でもないのに、凍てつく夜をイルミネーションで飾り立てる日本の12月。冬至を過ぎて、思った。日々寒さがつのり、暗くなって行く冬の力に抵抗するため、師走の慌ただしい熱気にクリスマスのきらきらしさを加えたのだ、と。
 これが終わる頃には、一日の長さは昼が優勢になってゆく。

 加護ユリ氏から揺蘭原稿と共にクリスマスカードが届いた。
 キリスト教徒じゃなくても、嬉しいです。

 一日、硝子を張ったような晴天で、富士山が青くくっきりと見えた。夕暮れ時はまた富士山が、薄水色と薄紅色、淡い黄色の混じった空を背に、黒いレースの影と化した木々を手前にして、切り取ったように美しかった。富士山を見たのは何年ぶりだろう。
 富士山こそは、手垢の付きまくったイメージで「だから何?」の最たる物だが、関東平野に育った私には、普段は山など見えないのに、晴れて空気の綺麗な日の朝夕限定で特徴の有る姿を見せるあの山は、霊峰と言うより自己主張しない静かで上品なお姉さんみたいなものだ。
 吉野熊野の山々のように、素の状態に強く働きかけるおどろおどろしいまでの力は無いが、霊峰富士は、下界の思惑など「別にそんなのどうだって良いじゃない」と醒めた様子で物思いに耽るそっけなさが良いのかも知れない。

 私がクリスマスに特に思い入れがない事は過去のゆりうたにもある通りだが、弟もそうだった。

 昨日、弟の妻から電話があり、うちの母の見舞いに私を誘ってくれたのだ。
 「え、でも。明日はイブでしょ?」
 小さい子供のいる家は、イブはクリスマスケーキを囲んで過ごしたいのだと思っていたので聞き返した。弟にとっても、クリスマスイブは特に意味のある日ではなく、ただの三連休らしいと知った。どこかに遊びに行ってるのだ。勿論嫁さんは、夫にはクリスマスを家族と過ごして欲しいのだった。
 嫁さんが呟く。「誰と会ってるんでしょうねぇ。。。。。。」
 世間が期待するように、別の女性とイブを過ごすようなタイプではないが。弟よ、既婚者ならこういうイベントくらい、家族に合わせるのもつとめの内ですよ。

 で、りりえん姉さんは弟の嫁さんと姪と甥とで、しゃぶしゃぶを食べに行った。
 楽しかったし美味しかった。嫁さん、ありがとう。で、悪ガキ系の甥もクリスマスのせいかサービス全開で、私の髪を何度もアレンジしつつ「きれい〜」を連発してくれた。大人の男性に綺麗と言われても時候の挨拶みたいなものだが、未成年に言われると嬉しいですね。

 甥と姪の、四六時中じゃれ合わなくてはいられない様は、「トゥー ブラザーズ」というアンコールワットの虎の子兄弟の映画を思い出した。ちっちゃい、二匹の「けもの」(笑)

 しかし姪はこの11月に8歳になっていた。
 あ、8歳。8歳で思い出すものは、安徳天皇。ふーん、と姪を頭から足元まで眺め、無邪気な笑顔をチェックしつつ私が考えていたのは「やまたのおろちが8歳の幼帝となって遠い昔に奪われた剣を取り返した」話。
 思い返せば、りり山13歳の頃。
 13歳といえば源頼朝が平治の乱に参戦した歳。それに引き替え私は納得行く事を何も出来ていない、と暗澹とした気分で末の弟にきいた。「あんた、何歳?」「8歳」。
 その時も、8歳か、安徳帝が平家の一門と海上に逃れて源氏と戦を繰り返していた年齢だ、と安徳帝をイメージしやすいように8歳の子供の体格や発育具合、立ち居振る舞いを参考資料の一つとして、眺め回したのだった。進歩が無い。この分では、百花や雅人に子供が出来て、子供の歳を聞いたら8歳だった→安徳帝が剣と共にどうのこうのの年齢だ、と眺める、をまたやるだろう。

 現代の8歳を観察して平安末期の8歳を思い描けるかというと。私が13歳の頃も、今も、無理なのだった。決定的な何かが欠けているのだ。
 食事が違う、成人と見なされる年齢が違う、風習が違う、生活環境が違う、教育も違う。

 産まれたときから帝位に就く予定の者としてかしずかれた8歳が、現代の8歳と似ている事はない。海の覇権貴族としての平家一門が、やまたのおろちの体内から奪われた宝剣とともに水底の都に還っていくためには、8歳の大人びた帝の、権力と言うよりは霊的王権に導かれる必要があった。
 入水の際に、宝剣をたばさんだ二位の尼(清盛の妻、時子)が安徳帝を抱いていたというのも象徴的ではないか。男性権力者ではなく、一門の中の女性の権力者なのである。安徳帝の母、建礼門院(清盛の娘)であっても良かったが、二位の尼だと年齢と共に呪術的力の足場が固まった女性ゆえに、文句無し。

 ああ、クリスマスと全然関係ない話になった。

 では精霊の加護のあらんことを!


 
by leea_blog | 2005-12-24 23:57 | Comments(0)
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