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一時避難の南の海ぎわ、瑞々しいココ椰子が運ばれる

タイに行って来ました。
骨の髄まで凍える日本の冬に音を上げて。
ろくに食事も取れないほど参ってしまい、
娯楽と言うより緊急避難の様相。



    渡航場所の条件。
        ↓
暖かい。マッサージが毎日受けられる。空気が良い。飛行機による移動時間が少ない。食べ物が健康的。

消去法でいくと、タイだったんです。呪術者の故郷、バリは捨てがたかった、しかし、遠方過ぎました。
ホアヒンの海ぎわで毎日マッサージと健康的な食事、久々の養生生活でした。
連れの女性は、介護資格を持っているし、個人旅行派だし、ありがたいことでした。私も役に立たなかった訳ではない。彼女は筋金入りの方向音痴だったのである!

毅然とした様子で間違った方角へ歩いていくYさんを見て、気がついた。
こっちでよかったのかな、と迷いが出るなら、方向音痴とは言えないのではないか。
迷いが出れば、確認するからだ。確認しつつ歩けば、めったに間違えない。Yさんは先に立って歩く癖もあった。
方向音痴の人は、「間違っているかも知れない」と思わないのだ。私は大抵ポーチに磁石を入れていたので、彼女にも薦めてみた。Yさんが磁石に関心を持ったかどうか、未確認である。


『私上最悪』について。
成田出立当日、意外なそそっかしさを発揮したYさんは囁いた。
「りーあさん、今回は最悪の旅になりそうな気がします」
どこかで聞いたセリフだと思ったら、私もいつも「今回は私上最悪の旅になりそうだ」と旅行メモに書き付けているのであった。おもわず微笑んだ。
一人旅なのに英語の練習もしていなければ、目的地の地図も無い、現地情報もほとんど無い、ホテルは現地で自分で取るのだが、成田を発つ前に既に吐き気がするほどの体調の悪さ、という酷いときもあった。
どんな旅でも、準備万端というのは望めないし、望むのは間違っている。あらゆる状況に対応しようと準備をしても、旅は安直な予想を簡単に覆す。

可愛い子には旅をさせよ。自分にも旅をさせよ。




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いままでは、旅は、内宇宙の均衡を取り戻す為に必要だった。
今回は、身体の回復の糸口を見つける、寒さで動かなくなった骨を休める、というと穏やかすぎる表現で、実のところ、吹雪に遭った動物が岩穴に退避して狩猟を続行する体力回復を待つような、やや差し迫った感覚だった。

暖かい国の人々の、猫のような体重の移動をぼんやりながめ賛嘆しつつ、手が自動的につける旅メモを、今回は意識的にやめた。
肩と腕と手がやられているのだ。書くな、描くな、暖めよ、ついでに読むな、ページをめくる動作も指に負担だ、と、南国の海ぎわでなければ苛立ちがつのるような、自らへの規制。

書かない時間は、快復には直結しない。が、それは真に、余暇である。
疲労した身体が、真の余暇を、果実のように、ひとくち、ひとくち、味わっていく。

私にとっては、実に六年ぶりの、「特に予定のない日々」なのだった。
多大な自由に溢れているかの自宅療養中は、会社員より暇がなかった。寝るのも起きるのも食べるのも、入浴も娯楽も、すべて病気療養のため。残業に疲れた仕事人が、1週間振りで帰宅するときの、「ああ、帰れる」という一瞬の開放感も無いのである。オンとオフが無いのである。


余暇とは何と貴重な果実であることか。
力ずくでいろいろなものを押しのけないと、手に出来ない。
『余暇』が生活必需品と認められれば、供給も増えるのだろう。
by leea_blog | 2003-01-20 01:43 | Comments(0)
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