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桜花で一喜、また一憂

花冷えのお陰で、今年の桜は長く保った。

桜の開花予報に一喜一憂し、咲いたら咲いたで咲き加減や散り加減を気にする。日本人って変よね〜、と笑いつつ、私もしっかり桜は気になるタイプである。


桜は奇妙な花だ。
「わ〜、綺麗」とか「わ〜、素敵」と思わず声に出るような、木に咲く花一般がもたらす感嘆が無い。美しいは美しいが、しんと静まったたたずまいで、何やら死の気配が濃厚。花びらもほとんど白に透き通り、血の気のない肌を思わせる。遠方から望めば、地中に埋まった死体を養分にした大きな菌糸類のよう。
梅の、猛々しいまでの、植物の力がこぼれ出たような咲き姿と比べても、桜は、人界にさして関心のないすっきりとした装束の異界の一団が通過してゆくようである。


彼岸と此岸が分かちがたく現出する桜の木々のあたり。
酒盛りや歌舞音曲にふさわしい。人界の善悪を越えた異界の力を、祈ることによって豊穣に導く古い作法の一つ。


ところで、桜は花びらがはらはらと降る散りかけが美しい。
うちの職場の窓から、小さな公園の桜が見える。私の部署は四階にあり、桜の高さは四階よりやや小さく、三階よりやや大きい。


先日、高みから花びらが乱舞しつつ降るのが見られた。
四方を背の高いビルに囲まれた環境で、桜の花びらが四階の窓より高く吹き上げられ、ビル風に翻弄されながら舞い降りるのである。窓からは、天から花びらが降っているように見えて壮観である。


桜の散りどきに、風の強い日が重ならねば見られない。
生き物のようにふるふると震えながら多方向に舞い降りてゆく一面の花びらは、羽虫が一斉に孵化したようでもあり、雪が深海に降るようでもあり、美しく見飽きなかった。


新鮮な花びらが地面に積もり、地の凹凸で模様を描くのも美しい。公園の清掃担当が、朝からばけつ一杯の花びらを捨ててしまうのが残念だった。掻き残した雪のように、植え込みに残る花びらの堆積に手を入れて、桜の手触りを楽しむのもこの季節。
by leea_blog | 2004-04-04 04:19 | Comments(0)
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