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2月の関東霊峰

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霊峰

箱根には、細かいことは決めずに出かけ、その時の感覚で行く先を変えて行った。
山の天気は変わりやすい。九時頃までは雲一つなく晴れ渡っていたのに、十一時頃にはちらほらと雪が舞い散り始める。

「天気予報の嘘つき」
と呟きつつ、臨機応変にルートを変えた。

芦ノ湖湖畔に一泊した。
土曜日なのに直前まで空室が有った宿である。高くて狭い。
かなりの降りになった灰色の湖畔に傷心しつつたどり着き、狭い部屋にあらためて落胆しつつ、すぐさまベランダに出て煙草を吸った。その時、雪が斜めに降る暗い空に、突然女性のアナウンスが響き渡った。

「ほんじつの じゅうによる いのししの くじょは しゅうりょう しました。みなさまの ごきょうりょく ありがとう ございました」

おお。役場のスピーカーから、ゆっくりと、一言一言区切りつつこだまする声音が告げるその内容。心が一気に晴れ渡った。

銃による猪の駆除。
あるいは、「獣による猪の駆除」。
狼犬でもけしかけたのだろうか。いや、銃を担いで沢山の人が山中に分け入り、猪を狩ったのだろう。
凄い。猪がいるのか。銃を持った人たちが居るのか。

猪くらいで感動するなよ、とバカにされそうだが。動物園以外で見たのは、ただ一度。吉野山中、十津川で、夕食用に檻に入れられた猪だけである。

野生の猛々しい獣が近くにいる、というだけで、冷えきった血の温度が上昇した。野山を駆け回る獣の力が、衰えた体力に太古の力を吹き込む心地。

翌朝、凍えつつ芦の湖畔に出て見れば。雪の衣をすっぽりかぶった富士が見えた。
親しげな吉野熊野の山々ではない事を悲しみつつ、やはり関東の霊峰は美しい、と思う。



観光絵はがきのような構図で申し訳ないが、貼っておく。
小学生のお絵書きのお手本のようでもある。Photoshopで絵のように加工した。


 
by leea_blog | 2007-03-11 19:11 | Comments(0)
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