モロッコの作家

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扉を大きく開けて疑念と過ちを通し入れよと私は助言した。そうすれば、真実もまた入ってくるから。今こそ知るがよい、〈秘密の帝国〉はもはや、夢でも地平線に描かれた砦でもないことを。おまえがその夢、砦なのだ。触れることのできぬとらえがたいこの夢、私の手で刻まれた石、私の息吹でできあがる身体の、この夢の内部におまえはいる。夢でできた存在だけが、おまえに到達できる。私の根もとを成す物質が発する声だけが、おまえに届くことができる。心して待つがよい、前進する森の意志に宇宙が屈し、言葉とイメージの幻惑の中で砂が渦を巻き、永遠と至福のなかに日の光が沈むのを。おまえは見るだろう、力ある男たちが甲冑を投げ捨て、一本の木の前にひざまずくのを、騎乗の族長マー・アル・アイニーンが疾駆し、〈北〉へたどり着くのを、ついには幼年を映す鏡が生み出した夜に、おまえの顔が眼と詩を捧げるのを。祖先の誇りと心のざわめきに忠実であらねばならない。この誇り、このざわめき、この手がもとで死ぬこと—それは、おまえの祖先が十分に心得ていたことだ。


( タハール・ベン・ジェルーン「不在者の祈り」より
 訳・石川清子 )


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by leea_blog | 2001-06-03 01:43 | Comments(0)
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