六十三日間の変化ある航海の後、私たちは六月八日の夜、海のかなたに稲妻形に移動する奇怪な灯を認めた—その六十三日間、私は憧憬の土地に対して、耐え難い待ち遠しさと、いらだたしい夢を見ていたのだが。暗い空には、のこぎり形の黒い円錐状の山影が浮き出ている。
船はモレアを回り、タヒチが見えた。 数時間の後、夜はほのぼのと明け始めた。 (ポール・ゴーガン著 「ノア・ノア タヒチ紀行」の出だし 前川堅市訳) ****** ***** ***** 画家による、香り高い紀行文。訳者によれば、ノア・ノアは、マオリー語で、香気ある、芳しい、などの意味。 ゴーガンにとってはタヒチだったが、実のところ、必ずしもタヒチである必要はなかったのではないか。霊的な水を求める者は、いずれの土地においても感受する、と思われる。 岩波文庫版は、版画も多数収められており、愛すべき一冊。 無意識の現地蔑視が自分本位な憧憬と同居しているのが気になる。それを差し引いても芳しい描写。
by leea_blog
| 2001-11-08 02:17
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