2017年 11月 22日 ( 1 )

人形怪談集 「人形レストラン」松谷みよ子他


子供向けの、「怪談レストラン」というシリーズ本の中に、
短編集、「人形レストラン」があります。

見開きには、以下のような文言が。

「怪談レストランへようこそ。
背筋がゾーッとするような楽しいお話を、どうぞ存分にご賞味下さいませ」

短編集の物語を、レストランのメニューになぞらえて、
編集してあるのですね。

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裏表紙。
髪が伸びる人形が洗い髪にドライヤーを当てています。

子供向けの本は、挿絵もたっぷりで、楽しめます。




過去に、江戸川乱歩の「人でなしの恋」、
梨木香歩の「りかさん」、
新井素子の「くますけと一緒に」、

など、人形小説を紹介してきましたが、

この本も、
とても面白かったです。


人形は、たしかに可愛い。

しかし、可愛いだけではなく、

怖さも持っています。


それは、人形が、

理屈や理性で割り切れない、

「ひとがた」としての力を持っているからでしょう。



この短編集は、

大人の人形マニアも「ほう、うまい点を突くな」と唸る、

お話が詰まっています。


原爆で死んだ持ち主の願いをかなえようとする人形、

病気で入院中の持ち主が治るように、

御百度参りをする人形、

持ち主の危機を予言する人形、

ほとんど妖怪の人形、


と、とりどりです。


私が一番印象に残ったのは、

「なぎさのフローラ」(森下真理)でした。


挿絵を除いて十ページの短さの中に、

怖さと愛おしさと不思議さが詰まっていました。

以下に、紹介します。

私は、妹のえみと、海辺を飛ぶように走っていく人形を見ます。

二人は人形の後を追います。

人形は小さな島の横まで来ると、海に入っていきました。

つられて私が海に入りかけると、

妹が、人形に手が無い事に気づいて泣きます。

振り向いた人形には、手だけではなく、両方の目もなかったのでした。

私と妹は悲鳴を上げ、必死で逃げました。

小さな家に飛び込み、助けを求めました。

優しいおばあさんは、その人形の事を知っており、二人に話してくれます。

戦争中の事。

妙という女の子が、貿易商のお父さんからもらったビスクドールを、

フローラと名前をつけて、とても大切にしていました。

ある日、妙はこの海辺に遊びにきます。

そこへ、5、6人の男の子、女の子がわーっと声を上げて妙を取り囲みます。

敵国製の人形を捨てるように、迫ります。

子供たちは人形の手足をもぎ、

妙を幾つも殴って、行ってしまいました。

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砂浜に、もげた人形の手足が散らばっている挿絵です。

人形好きなら、妙の心中を想像して、

胸が潰れる事でしょう。



妙は泣きながら、人形の胴とばらばらになった手足を抱き上げ、

引き潮になると歩いていける海の離れ小島に向かいます。


おばあさんは言います。

「ね、想像してみて。妙ちゃんの小さなうしろすがたと、

花びらのような人形のドレスを。

島について、白い鳥たちにかこまれて、

ほっとした笑顔になった妙ちゃんを。」
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戦争中の貧しい衣服と、
長い巻き毛の美しい人形の対比。
哀切な挿絵です。

人形の死体を運ぶ、戦時下の少女。


それからおそろしいことがおこります。

その日は大潮で、満ち潮どきには、島はすっぽりと海に沈んでしまうのです。

妙をなくしたおかあさんは、気が狂って死にました。

その前に、おとうさんも戦死していました。


おばあさんは言います。

「たいせつにされたフローラは、妙ちゃんをなぐさめたいのよ。

お友だちにしたい子をみつけると、

海の中のはなれ小島へさそうの」

ぞっとしたわたしは、ふるえだします。

あのとき、ついていったら、わたし、死んでいた・・・・。



以上が「なぎさのフローラ」です。



限られたページ数で、

愛しさ、不思議さ、怖さが一篇に濃縮され、

挿絵ともども、胸に迫ります。









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by leea_blog | 2017-11-22 11:07 | Comments(6)