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中原中也との愛 ゆきてかえらぬ

『中原中也との愛  ゆきてかえらぬ』を読んだ。

長谷川泰子/村上護編

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女優志望の泰子には、16歳の詩人中原中也との運命的な出逢いがあり、さらに評論家小林秀雄との壮絶な出逢いと別れがあった。「奇怪な三角関係」(小林秀雄)といわれた文学史に残る伝説の“宿命の女”長谷川泰子が語る、衝撃の告白的自伝。「グレタ・ガルボに似た女性」としても注目される。昭和初期の文壇を知る資料として貴重な一書。
背表紙紹介文より
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長谷川泰子の語りを村上護がテープにとり、文章に起こして、中也の詩や書簡、関係文人のエッセイ等を混ぜ合わせながら本にしたものだ。

衝撃の告白的自伝とあるが、衝撃というほどの事はなかった。
長谷川泰子の淡々とした語りのせいもあるかもしれない。

中也との事よりも、小林秀雄との話が印象に残る。

潔癖症をわずらった泰子と、献身的な小林秀雄。
そして、別れ。

仕事らしい仕事もせず、何とか暮らして行った泰子に驚く。

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私が修業をおえて山を降りたときは、五十五歳になっていました。会社なら定年の年なんでしょうが、私はその年から自分一人で生きてみようと考えました。ルンペンやってみようかなとも思ったけれど、それも難しいから、ビル管理人になったんです。(222頁)

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文壇のゴシップよりも、私は上記↑の話の方が印象的だ。

いかに生きて行くか。

時間の切り売りをせざるを得ない現代。一方で、引きこもりやニートの問題があって、働かなくても今日一日を生き延びてゆく人も増えている。ただし、それは幸福な事ではない。

はからずも生きる、という事の『実践』を、考えてしまった本だった。
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by leea_blog | 2010-11-28 16:02 | Comments(0)

逝きし世の面影  と、売れない本の著者のこと




イザベラ・バードの『日本奥地紀行』から、渡辺京二の『逝きし世の面影』へ。

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滅んだ古い日本文明の在りし日の姿を偲ぶには、私たちは異邦人の証言に頼らねばならない。なぜなら、私たちの祖先があまりにも当然のこととして記述しなかったこと、いや記述以前に自覚すらしなかった自国の文明の特質が、文化人類学の定石通り、異邦人によって記述されているからである。(『逝きし世の面影』より)

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異邦人達が見た、幕末〜明治初期の日本。
既に滅んだ文明。


知り合いのぬえさんに薦められた書物だ。名著である。

異邦人の目は、私には自分の目に映る異邦を思い出させる。
鮮やかな、異邦。
異国の地にあるからこそ際立つ、日本の特質も自覚させられる。

ところで、平凡ライブラリー版の後書きが面白かった。

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私はずっと売れぬ本の著者であった。それでよいと思っていた。(中略)私が本筋と思っている著書はだいたい初刷三千、重版なしというのが常態だった。ところがこの本は売れた。(後書きより)
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売れる売れないにこだわらず、実直におのが道を突き詰めて来た姿勢に共感できる。

古本屋、ブックオフで立ち読みをしてきた。
内容の薄い本が沢山出ている。内容が薄くても、売れるのである。

それらに比して、売れなかろうが何だろうが、自分に課せられた道を重厚に歩む人々が入る。
詩人達は後者だ。

コピーライターや作詞家と違い、あらかじめ売れないジャンルに足を突っ込んでいるのだ。
そのことは忘れてはならないだろう。

浅薄な事より、自分が何を成すべきか。
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by leea_blog | 2010-11-23 20:23 | Comments(0)

六本木ヒルズのライトアップ

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渋谷駅で待ち合わせして、六本木ヒルズ行きのバスに乗る。

行った事がなかった、六本木ヒルズ。

知人と歓談しに、夜景の美しい所に。

東京タワーがクリスマス用のライトアップに変わっていた。

歓談の時間は、ゆったりと流れた。

ああ、忘れていた心地よい一時、善良な意思の持ち主、真に大人の思考の持ち主の知人。

親しい人との他愛ない時間が、良い。

昔の事を思い出した。

アメリカの日系三世と結婚しかけた話だ。

ディーン・アキラ・イノウエ。元気だろうか。

私は日本語を捨てられなかった。
日本語の環境を、愛していたし、今も熱愛している。

私にとって、日本語を使えない環境に移住するのは、
羽をもがれるのと同じ事だった。

クリスマスに向けて、街はおめかしをしている。
日ごとに強くなる冬の力に対抗するために、盛んにイルミネーションで飾る。

暗くなりまさる空気が、電飾を際立たせる。

電飾を眺めながら、屋外のカフェで食事をした。

良き時間に感謝を。
作品を書き溜めよう、と思った。
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by leea_blog | 2010-11-20 20:44 | Comments(0)

完熟柿の到来

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日ごとに寒さがつのってゆく。

心まで冷えそうになることはありませんか?

今日は腹痛で仕事を休んでしまった。
職場の近くまで行ったが、具合が悪くなってインターネットカフェで休んでいた。

そうした寒々とした話題の合間に、
割って入った太陽の恵み。

揺蘭で芯の強い幻想作品を展開している、日嘉まり子氏から、完熟柿が箱で届いたのだった。

大振りの柿は、甘みとうま味がぎっしり詰まっていた。

目にも鮮やかな、橙色の玉よ。
陽光をじっくりため込んだ、線香花火の玉の滴、
木々に宿る甘い塊、晩秋の玉。

心が温まった。

日嘉まり子さん、ありがとう!
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by leea_blog | 2010-11-18 19:47 | Comments(0)

プチ良い事/ハニートーストの夕べ

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大人になると、「良い事」よりも「良くない事」が多くなる。

良くない事は、自然と向こうからやって来る。
家を出れば七人の敵。

大人は、保身のために他人を踏みつけにする。
自分のやった事を誤魔化すため、他人に罪をなすりつける。
横断歩道を渡っていても、突っ込んでくる車が有るように、災難は向こうからやってくる。

世間の荒波に、難破寸前のワタクシですが、
カラオケに出かけてきた。

今回は朗読の練習ではなく、友人達と。

パンを一斤豪勢に使った、「ハニートースト」に挑戦した。
画像をアップしておく。

Rさんが「大人になると、良い事が起こるように神に祈るより、
良くない事が起こらないよう神に祈るようになる」、という話をした。

しかし。
プチ良い事は、見渡せばあるものだ。

Rさんも、休日に声を掛けたら二人の美女が集まって、
両手に花状態でカラオケができるのだから、「良い事があったじゃないか」とも言える。


私も、くさっていた所を声かけてもらってハニートーストに挑戦できたし、
プチ良い事だ。


幸福のハードルを下げて、
ささやかな良い事が入って来やすいようにしたい。
ささやかな良い事を、一つ一つ大切にしていきたい。

そうすると、脳の快楽物質が出やすくなるそうだ。
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by leea_blog | 2010-11-14 21:15 | Comments(0)

尖閣ビデオの流出問題

ビデオ流出が毎日派手に報道されている。

流出経路や危機管理の問題が声高に言われるが、
問題は、
そもそも、政府が不都合な事実関係を隠ぺいしようとした辺りではなかろうか?

国民の、事実関係を「知る権利」は、どうなってしまうのか。

政府によって情報を管理されるとは、
一体いつの「戦前」か、とそちらの方に危機感を禁じえない。

インターネット上の投票では、
流出を支持する意見が大半を占めたという。
情報公開をしなかった政府関係者は、重く受け止めて欲しいものだ。。。。。。。
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by leea_blog | 2010-11-06 19:11 | Comments(0)

へいけうたのあかり/建礼門院 竜女物語の事など

建礼門院 竜女物語。

辰巳本平家物語は、いよいよ今回が最終回だった。

前半は民俗音楽の花男氏と、後半はジャズピアニストの板倉克之氏とのコラボレーションで、壇の浦以降の平家が語られた。

敗北し、捕虜となり、殺されて行った男達。
後を追う、または生き延びて菩提を弔う女達。

幼帝・安徳天皇の母、清盛の娘、建礼門院、平の徳子は後者だ。
壇の浦で入水したものの、熊手で髪を絡められ船に引き上げられた女達。


死ぬ事もかなわず、大原に庵を結んで隠れ住み、うたた寝の夢に苛まれながら日々を暮らす。
義父に当たる、平家の敵となった後白河法皇が、庵に見舞う。
本来顔を突き合わせられるはずもない間柄だが、建礼門院は果敢に応酬。
後白河法皇は長居しすぎたと帰って行った。

滅びるものたちよ。
一門が死し、生き残りの幼子達も殺されて行った中で、清盛の曾孫、六代だけは長く生き延び、頼朝が亡くなるなど、時代が変わって行き、やがて六代も斬首された。

女達は。
建礼門院は、やがてかいだ事もない良い香りに包まれ、麗しい楽の音を聴く。
弥陀の来迎か。

いや、夢に表れた、竜宮の、一門が待つ玉座に、竜女となっておもむき、天皇の母、国母として迎えられるのだ。

聞いていて、胸に突き上げる物が有った。

建礼門院は天国、つまり極楽浄土ではなく、地上と異界のあわいに有る異界、竜宮を選んだのだ。その、凛とした意思。肯定感。やるせなさ。

生き残った女達が過去を水に流して極楽浄土を願うのではなく、
過去を肯定し異界を肯定して竜宮に迎えられるのを望んだ時。
極楽の永遠時間は此の世の時間に分断される。
それでも人間の一生に比べれば、竜神たちの生は永遠に近い。
分断された時間の中で、水底に沈んだ一門は肯定され、浮かばれるのである。
そして、建礼門院自身も、異界という力を得て、天に舞い海に泳ぐ龍と化すのである。
まなうらに、美しい女竜のうねる身体と、きらびやかな竜宮が、そしてさざめき笑う一門の人々の浮かんだ。

まさに、竜女の物語だった。

個人的にも、安徳天皇八岐大蛇説を堅持する立場、建礼門院の竜女化は嬉しかった。ワタクシも聞いていて浮かばれました。

物語の間に、ご自作の歌がはさまれるのだが、今回も印象深い歌が多かった。
         —浮き橋を半ばで降りて 私だけ 夢の終わりに遅れてしまう—
                    夢の不合理な不安感。

辰巳泰子さん、良い物語をありがとう。そしてお疲れさまでした。
良き物語との出会いに感謝します。(本になりますように)

拙朗読も、評判が良くて良かった。。。。。。ほっとしてます。

あまたの佳き物がこれからも訪れてくれる事を祈って。
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by leea_blog | 2010-11-01 20:27 | Comments(2)