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リルケ/ナルシス

震災以降、人はパンのみにて生くるにあらず、との実感が高まっている。
文学は餓えに似ている。

リルケの神話詩、ナルシスを紹介しよう。


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               ナルシス

ではこれなのだ これが私から流れでて 大気や
林苑(もり)の情感(こころ)のなかに溶けこんでいるのだ
それは軽やかに私から逃げ去って もはや私のものではなくなり
そして輝いている なぜなら どんな敵意にもそれは出会わないのだから

これが絶え間なく私から立ち去ってゆくのだ
私は失せたくはないのに 私は待ちながらとどまっているのに。
けれども私のすべての限界は あわただしく迸って
すぐにもう向こうに流れでている

眠っているときでさえも それに変わりはないのだ 私たちを十分に結びつけて
いるものは何もない
私のなかの軟弱な中心よ その果肉を引きとめて置くことのできない
弱々しい心(しん)よ 逃亡よ ああ 私の表面の
いたるところからぬけでる飛翔よ

そこの水のなかに現れ 確かに私と似ているもの
そして泣きぬれた姿で 上を向いて ふるえているもの
たぶんこれと同じ姿が 嘗てひとりの女の内部に現れたのだ
でも どんなに彼女のなかに分けいって それに迫っても

その姿は捉えることができなかった
いま それは冷ややかで うつけたような水の中に
あからさまに横たわっている そして私はいつまでも驚いて見つめることが
できるのだ 薔薇の下のその姿を

だがしかし それはそこでは愛されていない そこの水底には
無関心な沈んだ岩石があるばかり
そして私は見ることができるのだ どんなに私が悲しんでいるかを
これが彼女の眼に映った私の姿なのだろうか?

こうしてそれは彼女の夢の中で 甘い恐怖にまで
高まったのだろうか? 既に私にも彼女の恐怖がほとんど感じられるのだ
なぜなら 我を忘れて見つめるとき
私には思われるのだから その私の姿が致命的だということが

(富士川英郎訳/リルケ「ナルシス」)

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ギリシア神話のナルキッソス、ナルシスが元になっている。
水に映ったおのれの姿に恋い焦がれ、ついには水仙になった美少年の物語だ。

ナルシシズム。

詩中の「彼女」とは、ナルシスに恋し、受け入れられなかったため声のみの木霊となったニンフ、エーコーの事だ。

おのが姿を恋い焦がれる自己愛の美少年の物語が、もはやおのれも彼も無くなる境地に高められている。

致命的な美。恐怖すれすれの。
美とは癒しでも有り、高まれば恐怖でもある。

こうしてそれは彼女の夢の中で 甘い恐怖にまで
高まったのだろうか? 既に私にも彼女の恐怖がほとんど感じられるのだ
なぜなら 我を忘れて見つめるとき
私には思われるのだから その私の姿が致命的だということが

最終連が、エーコーのようにわたくしの心にこだまする。
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by leea_blog | 2011-04-26 20:18 | Comments(0)

カロッサ/ある蝶に

ワタクシは、黄昏と夕闇と夜を歌う。

ハンス・カロッサは日の出と昼と光を歌う。

自分には無い陽光のセンスに、魅かれる。


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        ある蝶に

陽が森のまわりで香煙をくゆらせているのに、
まだ悲しんでいるのか、蝶よ—あまりにも軽い翼が
氷雨に凍てついてしまったので、危うい弱さによろめいて、
破滅におまえは身をゆだねようとするのか—
おお、目覚めそして堪えるがいい、
すでに近くで燃えているのだ、お前を助ける者、陽の輝きが。
しばらく待てば乾くのだおまえの翼の絹の粉は。
そしてまだ死に蝕まれぬ他の生きものよりも
ひとしお深く身に温もりを覚えつつおまえは
飛びたつのだ、おまえの魂を成就する昼のそよぎのなかへ。

----------ハンス・カロッサ  田口義弘訳----------


陽の温もりさえも伝わってきそうである。
そして、蝶は我々でもある。
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by leea_blog | 2011-04-17 19:56 | Comments(0)

東京ディズニーランド再開/観光業界

営業を停止していた東京ディズニーランドが営業を再開した。
ディズニーシーは、まだだ。


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東日本大震災の影響で営業休止していた東京ディズニーランド(TDL)が15日、約1カ月ぶりに営業を再開した。震災で営業休止や営業規模縮小を余儀なくされていたレジャー施設の多くが、営業再開に踏み切ったり通常営業に戻し始めている。ただ、自粛ムードの広がりや外国人観光客の訪日減のほか、電力不足の夏場に向けた節電も求められており、各施設は苦しい運営が続きそうだ。【井出晋平、小倉祥徳、谷多由】

 TDLは営業再開日を83年の開園日と同じ15日に設定、新たな出発を演出した。午前8時には再開を待ちわびた客約1万人が列をつくった。近くに住む主婦(32)は「地元なので、再開してくれて元気が出る」。TDLが1カ月以上休止したのは開業以来初で、運営するオリエンタルランドの上西京一郎社長は「来園者の笑顔を見てほっとした」と話す。

 節電のため、閉園時刻を4時間繰り上げ営業時間は午前8時~午後6時までで、夜間は営業しない。施設の照明や噴水も使用を抑制。さらに出力5000キロワットの自家発電機3台を導入する方針だ。休園中の東京ディズニーシーは大型連休前の営業再開を目指す。
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/news/20110416k0000m020086000c.html
毎日jpより
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電力の問題もあるが、楽しい場所が再開されたのは良いニュースだ。
ディズニーランドは、ディズニーが好きではないひとも(ワタクシのように)、ぱーっと馬鹿になれる。人間、憂さを忘れて馬鹿になるのも、たまには必要なのだ。

何より、ディズニーランド周辺には宿泊客を見込んだホテルが乱立しているのをご存知だろうか。
平素でもこんなに利用客が居るのだろうか、と思うほどのホテルがある。ディズニーランドが休園だと、経済被害で死活問題だろう。関係施設でも働く人が多いのだ。再開おめでとう。

一万人が列を作ったのは凄い。
それほど待ちわびた人が多かったのだろう。

ワタクシは、列が嫌いだ。
行列ができる美味い店も、並ぶくらいなら行かない。離れた場所から見守っていよう。
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by leea_blog | 2011-04-16 10:37 | Comments(0)

賛歌/ボルヘスの詩

余震が続いていますが、
人はパンのみにて生くるにあらず。
ボルヘスの詩を紹介しましょう。


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賛歌


今朝は、
楽園の薔薇の
信じがたい芳香が漂っている。
ユーフラテスの岸辺で
アダムは水の冷たさを知る。
黄金の雨が空から堕ちてくる。
これはゼウスの悪だ。
一匹の魚が海で跳ねる。
アグリゲェントゥムの男は思い出すだろう。
かつての自分がその魚であったことを。
いずれアルタミラと名付けられる洞窟で、
顔を持たない手が野牛の
反った背中を描く。
ウェルギリウスのゆったりとした手が、
黄帝の国から、
隊商や船によって
運ばれてきた絹を撫でる。
最初のナイチンゲールがハンガリーで鳴く。
イエスは金貨にカエサルの横顔を見る。
ピュタゴラスはギリシア人らに、
時間の形式は円環のそれであると教える。
大海原のある島で、
銀の猟犬たちが金の鹿を追う。
シグルトに忠節を尽くすことになる
剣が鉄床で鍛えられる。
ホイットマンがマンハッタンで歌う。
ホメーロスが七つの都市で誕生する。
白い一角獣を、
たった今、若い娘が捕らえた。
過去の一切が波のように打ち返し、
あの懐かしいものが甦る、
一人の女性がきみに与えた口付けのお陰で。

--------------ボルヘス詩集より。鼓直訳-------------------



驚くべき豊穰の幻想時間。
ボルヘス詩集は読み返されてボロボロである。



ところで、津波の来る地域に住んでいたとして、大地震が起こったとして。
あなたは取る物も取り合えず身一つで高台に走れるか。

津波の来ない地域に住んでいるため、防災意識もたかが知れているワタクシは、想像するだに無理そうだ。
貴重品と貴重書籍を取りに、家に戻ってしまうだろう。
書籍などを抱えて走れる訳がない。
そして津波に呑まれてしまうだろう。

津波の被害で、写真その他思い出の物たちまで失った方々の無念を思うと、胸が痛い。
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by leea_blog | 2011-04-13 15:08 | Comments(2)

上野公園の桜/亀戸の中華料理バイキング


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人が密集する上野公園の桜。

ぽかぽかの陽気だった。
亀戸の中華料理店に、ランチバイキングに出かけた。
東京大パイダン。
80品以上が食べ放題だ。

知人の同僚の中国人の紹介のお店。

中国の香辛料が効いた、良い店だった。
お客も中国の人が多い。

食べ放題は危険で、許容量以上に食べてしまった。ただでさえストレスで太り気味なのに、更に肥えてしまうではないか。


腹ごなしに亀戸天神に出かけ、上野公園に花見ウォーキングに出かけた。

上野公園は、毎年の事だが、凄まじい人出だった。
花より人のほうが多いくらい。パンダ見物の帰りの人も多いようだ。

花が密集している辺りは、摺り足でしか進めない有り様。

柵の中に入らないで下さいの立て札も無視して、柵の中で花見をする人々。

地上の喧騒に我関せずで咲き誇る桜の、静謐な事よ。

一風ごとに舞い散る桜吹雪が、夕方の傾いだ陽の光に射られて、きらきらと光っていた。

飲めよ、歌え、地上の人よ。
生きて居る事を謳歌せよ。

死すら思わせる静謐な木の花に、酔え。

そして明日を生きるのだ。
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by leea_blog | 2011-04-10 20:50 | Comments(2)

東京都知事選/桜の季節

明日は、東京都知事選だ。

出かける予定が有るので、今日事前投票に行ってきた。

小学校の桜が満開で、一部は早くも散り始め、花びらが地面に斑を描いていた。
一風ごとに舞い散る桜の、しんしんと静寂なこと。。。。。

あまりに厳粛で音が無いので、人は根方で酒を飲みたくなるのだ。

花見自粛の発言をした、例の、現職知事は破れるのか。
対立候補が微妙なので、再選されるのだろうか。

東京に何が必要なのか。

一票の重みというが、実は、ワタクシ一人の投票で何が変わるかといえば、変わらないことを痛感している。

しかし、選挙権は昔は女性には無かった。

選挙権が有る有り難さは痛みのようにのし掛かり、棄権の選択は無い。

ワタクシ一人の一票で何も変わらない、と言う人が一万人居れば、その人たちが投票に行く事で何かが変わるのだ。


桜よ桜。

投票日の、明日はどんな日になるのだろうか。
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by leea_blog | 2011-04-09 15:47 | Comments(0)

東日本大震災と、詩/薔薇の内部・リルケ

大災害を前に、詩は無力か?
否である。
なぜなら、人はパンのみにて生くるにあらず、だからだ。



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 薔薇の内部

何処にこの内部に対する
外部があるのだろう? どんな痛みのうえに
このような麻布があてられるのか?
この憂いなく
ひらいた薔薇の
内部に映っているのは
どの空なのだろう? 見よ
どんなに薔薇が咲きこぼれ
ほぐれているかを ふるえる手さえ
それを散りこぼすことができないかのよう
薔薇にはほとんど自分が
支えきれないのだ   その多くの花は
みちあふれ
内部の世界から
外部へとあふれでている
そして外部はますますみちて  圏を閉じ
ついに夏ぜんたいが  一つの部屋に
夢のなかの一つの部屋になるのだ

------------------------ライナー・マリア・リルケ/富士川英郎訳------------


頭の芯を揺さぶるような、化学反応、詩。
そして幻想小説。
魂に届く薬である。
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by leea_blog | 2011-04-06 14:22 | Comments(0)

東京の花見自粛? 不謹慎なのか

社会総合 - エキサイトニュース
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花見の名所、上野公園(東京都台東区)などを管理する都が、宴会自粛を呼び掛けている。東日本大震災の被災者や計画停電に配慮したものだが「行き過ぎ」との声も出ている。上野公園は約1200本の桜があり、例年シーズン中に150万人以上の花見客でにぎわう。都は震災以降、園内30カ所に宴会の自粛を呼び掛ける看板を設置した。約500本が咲き誇る井の頭公園(武蔵野市)でも同様の看板が目立つ。「地震発生に伴い、公園内の宴会自粛をお願いします」などの記載がある。石原知事は記者会見で「少なくとも夜間、明かりをつけての花見は自粛すべきだ」と発言。30日の集会では「東京で花見なんかするわけには、絶対にいかない」と述べた。これに対し、蓮舫節電啓発担当相は1日に「権力で自由な行動や社会活動を制限するのは最低限にとどめるべきだ」と反論。
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桜が咲き始めている。

この時期、日本人の心は浮き立つ。

しんしんと静謐に咲く桜。二週間ほどで散ってしまうわずかな開花期間に、厳粛な高揚を感じる。

単に美しい物を愛でるというだけではない。
桜の木の下には屍体が埋まっている、ではないが、厳粛で不吉ささえ漂う何かがせき立てるのだ。

散り際も美しい。一風毎に、花びらが吹雪のように舞う。

桜の下で酒を飲みたくなるのは、ごく自然な情動だ。
一時でも、憂さを忘れる事が出来る。

自粛が呼びかけられているという。

電力の問題なら仕方がないが、以下の↓精神論なら話は別になる。

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 東京都の石原慎太郎知事は29日の記者会見で、東日本大震災に関連し、「桜が咲いたからといって、一杯飲んで歓談するような状況じゃない」と述べ、被災者に配慮して今春の花見は自粛すべきだとの考えを示した。
 石原知事は「今ごろ、花見じゃない。同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感が出来てくる」と指摘。さらに「(太平洋)戦争の時はみんな自分を抑え、こらえた。戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」とも語った。
 都は既に、花見の名所となっている一部の都立公園について、節電などのため入園者に宴会自粛を呼び掛けている。(2011/03/29-19:12)時事ドットコム
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自粛をする事が痛みを分かち合う事になるのか?

敢えて言うなら、被災地の銘柄の酒やつまみを奨励するがいい。

自粛で経済が回らず、士気も萎えるのでは、復興に繋がらない。
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by leea_blog | 2011-04-02 11:18 | Comments(4)