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独演!俳句ライブ16  感想その3

そのようなわけで。続きである。

三. 恒例!飛入りオンパレード(泰子氏お名乗り上げ!)

俳ラは飛び入りを充実させたい意向が強い。添え物ではなく、出演者を脅かす存在としての飛び入りを求める。大抵は、メインの出演者に配慮した添え物をみずから演じるのが「大人の配慮」「空気を読む」というものだろう。私などは見かけによらず大人の配慮が多大な方だから、逆に俳ラの姿勢に敬意を感じる。

今回は、メインの出演者が三名だったから、飛び入りタイムが長く取れたが、それでも最後の出し物が大幅に遅れるほどの充実振りだった。
 あらかじめ名乗りをあげていた歌人の辰巳泰子氏が、スケッチブックにマジックペンで書いた折り句を披露し、その場でお客さんの名前を織り込んだ短歌を作成する。会場から飛ぶ声をしなやかに外して綺麗な風格の短歌にして見せる。「ことほぎ」の儀式のようであった。
短歌の五・七・五の部分だけを取って俳句のように読んでみる試みも、つづけて読んだので長歌のごとし。大阪アクセントと相まって、まさに歌うように聞こえた。ここで、来週に控えた自分の朗読会の課題がさっと頭をよぎる。構築された作品の意味を追いながら聴く意外に、音楽の中に単語が宙に混じる感じを楽しんでもらいたい、という前提なのだが、言葉も「音」として楽しむと、言葉を噛みしめつつ聴く楽しみは同時には味わえないのだ。辰巳氏の長歌系大阪アクセント詠みを音として聴いてしまった私は、すぐさま「意味を噛みしめつつ聴くと面白かっただろうに」、と悔やんだ。自分の朗読会での課題が波の如くに押し寄せた。

 次々と個性溢れる飛び入り朗読が続いた。似た傾向が一人として居なかったのは、さりげなく凄い事だ。大抵は、似た傾向の人が重複してしまうものだ。
 沢山の方が朗読したので、個別のコメントが書き切れないが、季語の効果をしっかり狙った作品の朗読のあとに、季語が世界には通用しないと考える夏石番矢氏が朗読を展開するのも、濃密であった。世界には通用しなくても「新宿では通用する」と野次があって、有効な野次も俳ラでは推奨されているのだが、考えるきっかけを投げて客としては面白いものだった。
私が拠っている詩は季語の存在しない表現形式だが、日本語で書かれた詩は、外国語で同様に味わうのは不可能である。長い年月を経て現在に至っているその国の言語。助詞の一つで印象が変わる作品ゆえ、何語で書かれたかの制約は、実の所大変な制限である。(夏石氏は世界俳句の立場から、あらかじめ数カ国語で考えて作品をものしておられるかも知れない。)
私から日本語への執着を消して作品を作ることは出来ない。しかし、そのコミュニティにとってのみ意味のある言葉の妙なら、文学としていかがか、と思うし、逆に世界で通用してもこの場では関係ない、とも言えてしまう。季語を通り越して、様々な思いが自分の中で渦巻いたのも、氏が季語否定の発言をし、他方、季語擁護の野次も有ったためである。

夏石番矢氏は、以前、日本の観客が(具体的には以前のサムライでのイベント時)押し静まって拝聴しているので、調子が出なかったと言っておられたが、今回は「空飛ぶ法王」の句に笑いを上げるお客さんも居て、調子が良さそうだった。

この他、それぞれが拠って立つ所のものと、異なるものとの様々な相違も有り、大変高濃度の飛び入りタイムであった。
そもそも、大人になると「飛び入り」はなかなかやらない。私の朗読スタイルは飛び入り向きではないのでまた別だが、先程の「拝聴」と根が同じであるように思う。

続く
by leea_blog | 2009-12-01 21:25 | Comments(2)
Commented by 二健 at 2009-12-10 04:51 x
当「俳ラ」の飛び入りに対する、ご意見、感慨深く拝読しました。オープンマイクは別として、世間では添えもの程度の扱いの飛び入りを重要視した朗読会をやりたいと思っています。レギュラー(出演者)が予断を許さない存在としての飛び入りは道場破りの輩として歓迎しようという魂胆です。野次、歓声、合いの手も然り。演者は芸人風情であり観客に向き合い、矢でも鉄砲でも持ってこいと見栄を切る心構えがいいなと思います。拝聴奉る程の次元に達すとこの限りではありません。辰巳氏、石原氏、翼氏、鹿又氏、昆布氏、夏石氏ら全く別の個性の方々でした。客が舞台に上がることの意味を更に考えたいです。
Commented by leea_blog at 2009-12-12 14:35
観客、飛び入り含め俳ラなのだ、という姿勢は、良い刺戟を受けます。かなり前の回で、俳ラの告知文の中に観客としてくる予定者の名前も列記されていた事があって、通常のイベントとは異なるパワーを感じて面白かった事を思い出しました。「え?そんなのあり?」のような。
飛び入り名乗り上げの人もポスターに組み込んじゃう辺り、明確な姿勢を感じます。
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