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日本探偵小説・江戸川乱歩など・浪漫伝奇



秘めた人形愛「人でなしの恋」を再読したのは、
創元推理文庫だった。

創元推理文庫の最終ページに、
日本探偵小説全集の案内が載っていた。

中島河太郎による「刊行に際して」という文章が、
大変面白かった。

引用してみる。

「しかし、この盛況の蔭に、明治以来の探偵小説の伸展が果たした役割を忘れてはなるまい。これら先駆者、先人たちは、浪漫伝奇の炬火を掲げ、論理分析の妙味を会得して、従来の日本文学に欠如していた領域を開拓した。その足跡はきわめて大きい。
 いま新たに戦前派作家による探偵小説の精髄を集めて、新しい世代に贈ろうとする。
 少年の日に乱歩の紡ぎだす妖しい夢に陶酔しなかったものはないだろうし、ひとたび夢野や小栗を垣間みたら、狂気と絢爛におののかないものはないだろう。やがて十蘭の巧緻に魅せられ、正史の耽美推理に幻惑されて、探偵小説の鬼に取り憑かれた思い出が濃い。
 いまあらためて探偵小説の原点に戻って、新文学を生んだ浪漫世界に、こころゆくまで遊んでほしいと念願している」


ふむふむ。

気合いが入った、良い文章ですね。


私は探偵小説を読むには読んだが、のめり込めなかった。

それも、私が若過ぎたせいかもしれない。


浪漫伝奇の炬火、素晴らしいですね。

振り返ってみれば、
私の世代以上は、子供の頃に江戸川乱歩を、大抵の人が読んでいた。

明智小五郎や小林少年を知らない人は無かったと思う。


大人が浸り切るのはわかるが、
少年少女が、「妖しい夢に陶酔」するのが普通だったとは、
大人になって振り返り、今の子供たちと比べてみるに、
不思議な時代である。

子供らしい健全さは、どこに?

しかし、毒抜きされた、健全という名のプラスチックの玩具は、
人間の本来のあり方だろうか???

否。

子供時代に「妖しい夢に陶酔」する経験をしておけば、
脳から快楽物質が出る訓練もされ、
人生の不思議さ、あり方の多様性にも、目が開かれるのではなかろうか。






by leea_blog | 2016-01-24 21:22 | Comments(0)
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