絵本・「おりこうなビル」 (かしこいビル)。ご主人様を追いかけてくる忠実な人形


良い絵本は、大人が読んでも良いものですね。

人形の童話や絵本は沢山あれど、

少女と兵隊人形の、良い話を紹介します。

「おりこうなビル」。以前は、「かしこいビル」という、違う訳で出ていました。
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文章と絵・ウィリアム・ニコルソン。
訳・つばきはら ななこ


少女のメリーに、おばさんから、
招待の手紙が届くところから始まります。

おばさんのうちに、あそびにきませんか、
なんにちとまってもいいですよ、

という手紙です。

何日泊まってもいいなんて、
子供心がわくわくしますね。

メリーは、
一緒に連れて行くものたちを選びます。

おもちゃのうまのアップル。

けがわつきのてぶくろ。

布製人形のスーザン。
赤いトランペット。

くつ。
ミニチュアのティーポット。
名前入りのヘアブラシ。

おりこうな兵隊人形の、ビル・デイビス。
おさいふ。

メリーは、
おとうさんにもらったりょこうカバンに、
連れて行くものたちをつめますが、

なかなかちょうど良く詰められずに、

何度も詰め方を変えてみます。

とうとうじかんがなくなりました。

メリーはおおいそぎでつめこみました。


ところが!

なんと!

よりによって!

ビル・デイビスをわすれたのです。

かわいそうなビル。


忘れられたビルが、
大泣きしている絵が。

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両目から涙がすごい量で落ちて、

足元に水たまりが出来ています!

ううう。
これは可哀そうだな。。。

この絵本を買おうかどうか迷って、

ぱらぱらとめくって、

この絵を見た人は、

必ず買うに違いありません。


大人が見たら、
「かよわく無力な人形が、
ご主人様に忘れられて大泣きしている」、
と胸が痛むでしょう。



けれど。

人形は、

大人が思うほどかよわかったり、

無力だったりしないのです。



なんと、ビルは、

ご主人様を追いかけて、

はしりにはしります。


ご主人様が乗った汽車を追いかけて、

ちからのかぎりはしります。


メリーがドーバーのえきについた、ちょうどそのとき、

ビルもドーバーのえきについたのです。


「おりこうなビル」

と、以下の絵で絵本は幸せに終わります。

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馬のアップルも、
布人形のスーザンも、
トランペットも、
ティーポットも、

ビルが追いついた事を喜んでいます。


ビルは、

花束をご主人様に差し出しています。

ビルが大泣きしている絵と、

この絵は、

一度目にすると、

忘れられません。



私がこの絵本に出会ったのは大人になってからです。


大人だから、

大泣きするだけじゃなく、

果敢に追いかけるビルは、

とてもお利口に見えます。

走っている汽車を追いかけ、

力の限り走って、

ご主人様と同時にドーバーの駅に着くなんて、

本当にえらい、と、

感心します。


「人間だって無理なのに、

人形の歩幅では、

物理的に無理だろ!!!!」という考えが、

全く浮かばない絵本です。


そういうことが、「いかにもありそう」と、

自然に思えるのです。

これは、作者の力量ですね。



裏表紙も、

「おまけ」のようで、愛情に溢れています。

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ビルは、結構大きい人形のようですね。

メリーはビルを両手で力一杯抱きしめ、

ビルは、

嬉しくて体がC型にそり返っています。



そう、大人だから、

「いい話だなあ」と思うけれど、

私が子供のころこの絵本に出会っていたら、

どう思うであろうか?

「おりこうな人形だなあ!

ビルみたいなお利口な人形、欲しい」

と思うか、というと、、、。



多分、思わないのです!


子供時代。

私も、世間の子供並みに、

「りかちゃん」や「バービー」が、

欲しいと言えば欲しかった。。。。


親に言っても、

買ってもらえなかった。

欲しかった、でも、

「どうしても、絶対、欲しい」かというと。

怖いから、

無ければ無くても我慢出来ました。


子供たちの間で流行った怪談があります。


「古くなった人形をゴミ捨て場に捨てに行ったんだって。

それでね。

家に着いたら、

何と、

ゴミ捨て場に捨てたはずの人形が、

先に帰って玄関に立っていたんだって。。。。」


子供の頃の私には、

この怪談は、

「いかにもありそう」に思えていました。


何しろ、幼少の頃ですから、

これからの人生は、

果てしなく広がっており、

人形を買ってもらっても、

一生可愛がる責任は、

まったく持てませんでした。。。。


一緒に遊べば、

やがて、傷んで壊れるでしょう。

捨てなくてはならない位、

傷むでしょう。

人形が、もし、

捨てても捨てても戻って来たら???


怖過ぎます。


それを思うと、

人形は、

「欲しいけれど、無くても仕方が無いかな」という、

存在でした。


ぬいぐるみは特に、すぐに汚れて、

破けるのも想像出来るので、

絶対に欲しく無かったですね。。。




大切にしても、

いつか別れはやってくる、

諸行無常。。。。



そういう子供でしたので、

「おりこうなビル」を子供の頃に読んだら、

「これだけおりこうだと、

古くなって捨てても、

絶対、絶対、戻って来そう。。。。」

と、怖がったかも知れない。



大人になれば、

古くなって傷んだ人形は、

捨てる以外の選択肢があるのを分かっています。

捨てずに思い出として保管したり、

修理に出したり、

人形寺で供養したり、と。



涙で水たまりが出来、

ご主人様を追いかけて、

ついには汽車に追いつく、

おりこうな人形。

おとなも、

「いかにもありそう!」と、

引き込まれ、メリーとビルを応援したくなる絵本です。


























by leea_blog | 2018-03-20 21:35 | Comments(0)
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