まれびと冊子【揺蘭」見どころなど・その3

【揺蘭】15ご紹介の続きです。


【勝嶋啓太】さんは、一度見たら忘れられないイラストも描く。

特に、自画像が秀逸だ。(バックナンバーご参照)



揺蘭の表紙を見た限りでは、勝嶋さんの世界がまさか載っているとは誰も想像しない。

「揺蘭は、編集の西野りーあが妖霊系だから、

勝嶋啓太さんが載っているはずがない」的な。


といった、ギャップが、他の諸作品とも相乗効果を出している。




今回は、新詩集「妖怪図鑑」の中の、自薦詩を、描き降ろしイラストで掲載、という、大盤振る舞いだ。

第四詩集「今夜はいつもより星が多いみたいだ」で、大6回壷井繁治賞を受賞された。
おめでとうございます。

(今号の揺蘭で、本人が詩の最後に書いてくれたおかげで、知りました。こういう、追加情報があると、未知の読者も関心が引かれやすくて良いのではないか)


ーーーーーー
「自分は
あなたが5年前に山手線の車内に置き忘れた
500円のビニール傘です」
5年前・・・・そんなことあったっけ・・・覚えてないけど・・・
「しばらく
JR東京駅のお忘れ物預かり所にいたのですが
いつまで待っても受け取りに来られないので
自力で帰ってきました」とのこと

(「唐傘お化け(ビニール製)より)

ーーーーー


置き忘れてその存在自体すっかり忘れていたビニール傘が、
迎えにきてもらうのをずっと待っていて、
とうとう妖怪になって戻って来る、という、

本当はとても怖い話だが、

勝嶋ワールドでは、深刻にならず、面白げに、しかし哀愁をたたえて描かれる。


と、ここで、今号のシンクロニシティ。

編集人、西野りーあは、
おりしも、「紅蝶の人 人形愛伝説」を執筆中で、
ああでもない、こうでもない、と、書いたり削除したりを繰り返していた。

書いたけれど、思案の末に削除された文章に、

「捨てた人形が戻って来る、という怪談は沢山あるが、捨てた机が戻って来る、とか、
捨てた座布団が戻って来る、という話は一向に聞かない」

というものが有った。

人形(ひとがた)の呪力性を、他のものと比較して、書きたかったのだった。
「紅蝶の人 人形愛伝説」そのものが長くなりすぎたため、
この一文は削除に回されたのだった。


が! 勝嶋啓太さんの原稿が届いてみると!

勝嶋ワールドでは、特に愛着も持っていなかった安物量産品のビニール傘が、
置き忘れられて5年間も持ち主が取りに来るのを待ち続け、
妖怪になって自力で戻って来るのだった。

「一向に聞かない? 世間では聞かないですよね。
では、ぼくが皆さんにお聞かせしましょう」とでも言っているかの、
タイミングであった。


台風の後などに、
壊れたビニール傘が道に捨てられているのをよく見かける。

そうした、捨てられて省みられないビニール傘、
安く量産されて、愛着など持たれずに使われて破棄される前提の傘が、
持ち主の元に自力で戻ってきたら。。。と、想像してみた。


西野りーあの「紅蝶の人 人形愛伝説」では、
苦労の末にお迎えした手作り品の台湾の人形に、
「好きだよ」「可愛いよ」と言い続けた所、
本気にされてしまい、想定外の成り行きを怖がったりしているさまが描かれる。

「それは確かに、捨てても戻って来る関係だな」、と、読書諸氏は思うであろう。

が、ビニール傘となると、
ビニール傘だけに、
妖怪になって戻って来るとは誰も想像しないし、
そんなことになれば、

人間の都合で作られ、使い捨てされる100均グッズなどが、
いちいち自力で戻って来る可能性も出てくる。
どう責任をとったらいいのであろう。。。。


勝嶋ワールドでは、ホラーにならずに、
現代ならではの妖怪たちの、
可笑味のある、読後感が後を引くストーリーに仕上がっている。


(他の作品の紹介に続く)













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by leea_blog | 2018-12-01 22:46 | Comments(0)
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