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まれびと冊子【揺蘭】16・横山克衛



まれびと冊子【揺蘭】16号の見所を、冊子掲載順にご紹介していきます。

まずは、詩人で画家の横山克衛氏。


横山氏は、詩人たちの描く絵のグループ展を開催もしていました。

横山さんの詩は、

哲学者のようでいて、童話的な語り口が心地よい。
童話的だが、微量の毒入が含まれている。

横山克衛氏の詩の魅力は、
柔らかな言葉選びに混じり込んでいる、微量の毒素、あるいは残酷さというべきか、
それが隠し味になって、読み進めてしまうのである。



以下、引用


ーーーーー

水について


思考は生き物なので
水の中に泳がせ、ときおりは餌を与えねばならない
これは真実だが
なかなか知る人はおるまい
忘れられた思考は、やがて死んでしまい
砂に埋もれて、しばらく後に、化石となって現れる

   中略

頭の中にあるもの、それは静かな湖である

湖には何もかもがいて、何もいない
だから何もかもが起こるが、何も起こらない

ーーーーーーーー


大学の研究室の中で、長年研究に没頭しいる少し偏屈な謎の学者が、
液体の入ったフラスコを手に、
「これは真実だが
なかなか知る人はおるまい」
と独り言を言うのを聞くような、不思議な味わいがある。

水の中を泳ぐ思考は、どのような形をしているのであろう。
ひらひらとだったり、ぼってり浮いていたり、色も形も大きさも様々なのであろう。

忘れられた思考が死んで消えてしまうのではなく、しばらく後に化石となって現れるのも、面白い。

頭の中には、ヒマラヤ山中のような人が通わない場所に眠る湖のような、
太古から存在するような湖があるのであろう。

頭の中なので、「何もかもがいて、何もいない」。「だから何もかもが起こるが、何も起こらない」。はたから見ると、頭の中で起こっている何もかもは、見えない。そして、湖は、奇跡のように何もかもを起こし、訪れた冒険家の前に現れた太古の湖のように、何百年も変わらないように鎮まっている。

人の頭の中というものの、奇跡に満ちた湖を、童話のような語り口で提示し、それを読んだ人は、我が身を振り返る。

自分の思考という生き物にも、いろいろ水をやって泳がせなくてはならないなあ、とか、
運動不足だな、とか、
水が腐っているなあ、とか、
一部思考が活性化しすぎて脳の生態系が危機だ、とか、思うのだ。

そして、ヒマラヤ山中に湖ができたのはいつ頃のことであったか、等、その湖の古さに想いを馳せるのである。


横山さんは、自分の絵を表紙にした詩集もたくさん出している。

気になったらサイトをチェックしてみましょう。


まぼろし地下道


https://roseandmarie.jimdofree.com/

(拙サイトはセキュリティの観点から、直接リンクが貼れません。URLをコピペして飛んで下されたし)



揺蘭16号の紹介は、続きます。










by leea_blog | 2019-11-25 11:10 | Comments(0)
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