人気ブログランキング | 話題のタグを見る

闇の桜。 光降る春のお湯。

異動の季節は、疲労が溜まりまくる。

職場の前の公園に枝振りの見事な桜があって、
花見の季節は昼間から場所取りの人が陣取っている。
この公園には灯りがない。
夜は真っ暗である。
回りはオフィスビルなので、あやめも見えぬ真の闇にはならないものの、相手の顔が見えず手元も見えないくらいには暗くなる。
そんな中に、ぼうっと桜の花が浮かんでいるのである。
そして、花見の人々は、闇の中で延々と酒盛りを続けるのである。
 私は残業しつつ、窓から闇に浮かぶ桜とその下の影の塊状の宴会人たちを見ていた。闇の中の酒盛りは、馬鹿騒ぎする酔漢もなく、呪術めいて素敵だった。

 あまりに疲れたので、豊島園の庭の湯に行った。花見と温泉を兼ねたのだ。露天風呂には舞い散る桜の花びらが斑のように浮かんでいた。一人用の焼き物の湯船に入りながら、頭上の桜の花を仰ぎ見る。木々の細かい緑の芽も素晴らしい。昼の光が湯に降って、きらきらと反射している。光と水と植物。ここの所私に足りなかった物だ。春の木々は、冬の疲れを癒す何かを大気中に放っているかのよう。

 黄金の光が傾いで赤金に燃えながら木々の間に沈み、辺りが藍色の闇に落ちるまで、庭園を見ていた。
 温泉と花見を同時に楽しめる近場の極楽であるが、想像したより混雑していなかった。皆、桜の下の酒盛りに出かけたのであろうか。

 堪能して夜道を駅に向かう途中、豊島園が夜桜を見る人たちに無料で開放されていた。明るい電飾の入り口に私も吸い寄せられそうになった。が、薄着で家を出た身に夜の空気は寒すぎた。ここで園内に迷い込めば、再び発熱は必至。夜の遊園地と夜の桜の誘惑を断ちきって駅に向かった。ああ、異動シーズンじゃなければ、風邪を引いて寝込んでも堪能したいのに。桜はこの時期しかないのだから。

 
 
by leea_blog | 2005-04-11 02:28 | Comments(0)
<< 女性専用車両の体験 四月の異動。 そして、読むこと... >>