2005年 10月 31日 ( 1 )

【島とクジラと女をめぐる断片】、薬が切れたら売人の言い値で買うマニア

アントニオ・タブッキにはまった。

 どうしても引かれた本があって、例の如く買って寝かせて置いたのだ。『ベアト・アンジェリコの翼あるもの』。読む順番がなかなか回って来ず、ようやく最近読んだ。本によっては、待ちきれずに帰りの電車で読み始める物もある。タブッキの文体が、ぱらぱらとめくっただけでは、私にそうした餓えを呼び覚まさなかったのだ。

 が、今は。水を求める砂漠の旅人の気分である。
 で、【島とクジラと女をめぐる断片】を購入しようと池袋リブロに行った。
 無かった。使えねーな。実際、池袋リブロは、私の欲しい本に限って「お取り寄せ」な事が実に多いっ!

 仕方なく、ネットで購入しようと、何となくYahooオークションで検索してみた。【島とクジラと女をめぐる断片】初版が、八千円近かった。何、この値段。。。
アマゾンで検索した。ああ、絶版らしい。しまった。

 ここまでは良くある事である。以下が尋常ではない。
 アマゾン書店では、古書も同時に見られる仕組みになっている。USEDで出品されている同書を覗いた。四冊出品されている1995年出版分のUSED価格が、¥7,880、¥7,881、¥8,000、¥9,000なのである!!!!
 新品価格 ¥1,937(税込)の商品が、である。

 1998年の新装版は、新品価格¥1,995(税込)が、USEDでは¥2,500、¥6,480円の二冊が出品されている。
 新品はこちらも絶版らしい。

 
1995年版と1998年版の価格の開きも興味深い。内容的にはどう違うのであろうか。重要な箇所が新装版では削除されている、とかか?

感心したり驚いている場合ではない。私は単純に、のどが渇いて死にそう状態なのだ、理屈はいいから、今すぐ読みたいのだ。絶版になっているとはいえ、何、このUSED価格は!!!! 揃いもそろってこの価格は変だろ。アマゾンは業者だけではなく、一般人も手持ちの本を売りに出すから、蔵書を処分したい一般の人たちもまあ普通の値を付けて出品する。大抵は古本の値段はばらつきがあるのである。大体、初版本じゃない物や保存状態が悪い本はそんな馬鹿値で売れないしね。
それが、アマゾンのusedコーナーに並んだのが、目を剥く高値で足並みを揃えた業者ばかりとは。
おのれ〜、古書店が共同で地上げしているに相違ない!  


 ちなみにヤフーオークションの方の八千円近い古書は、業者の出品にも関わらず再出品されていなかった。既に売れたのであろう。買う人が居なかったらそんな値段は付けないであろうから、ニーズがあるのだろうが、それにしても高いでしょ。。。。。

 恐ろしい世界だ。。。。。
 いや、何度も言うが、私はもの凄く喉が乾いていて、コップ一杯の水が欲しいだけなのだ。
 それが無くては、死んでしまう位に、もう限界なのだ。
 南極の氷を溶かした水、とか、ルルドの聖水、とか、ガンジス川の聖なる水を求めているのではない。
 水道水で良いんだってば、飲める水なら!!!

 染みや焼けや褪色あっても、鉛筆でアンダーライン引いた跡があっても、いいんだってば。
 
 あちこち当たった。運良く楽天フリマで、新装版が千円で出品されているのを見つけた。急いで購入予約した。ふらりと入った書店がいきなり火事になり、何が起こったのか把握する間もなく周囲を炎に囲まれながら必死に走り、からくも欲しい本を抱きかかえて焼け落ちる書店から逃れ出た気分である。

この時、目当ての本が火の粉の向こうから「りーあさん、ここです、ここです」と呼ばわって居場所を知らせてくれればロマンティックだが。。。。実際は、ネットというのは体温が伝わりにくいもので、楽天フリマは見落として別口を探し回ったあげくに、疲れ果てて楽天フリマに戻った私が見つけたのは、検索結果リストの片隅でプラスティックの板よりも無表情に、他の本と異なる気配を一向に見せもせず沈黙を守るこの本のタイトルだった。もちろんそんな具合だから探している私の気配に気づいて、「ここです」と向こうから合図してくれるなどということは、まーったく無かったのだ。


購入申し込みをしたとはいえ、業者から連絡メールが来るまで落ち着かない。
「店頭と同時販売なので、既に店頭にて売れてしまい、楽天フリマは削除が間に合わなかった」とかなんとかメールが来たらどうしよう、と心配中である。

 そんなに貴重な絶版本とはつゆ知らず、【読みたい焦燥モード】に入ってしまったのだ。道ですれ違って惚れた女性が、実は高級遊女で、ワタクシの給料では逢うことはとても無理、、、、といった感じである。

 そんな金額払えるか!と憤りつつ、それでも、読みたい飢えには勝てず、薬の切れた麻薬中毒患者のごとく、言われるままに八千円を払ってしまいそうだった。恐ろしい世界である。

図書館で探してコピーしたら良いって? あーあ、昔は良くやりましたよ、国会図書館で絶版本のコピー。
でもね、小説だとコピーももの凄い量になるんです。しかも、コピーって紙がすぐ劣化するし。本マニアとしては、本の形で手元に置きたいんです。紙の手触りと重さ、存在をまとめて「本」、というんです。

あ、今気が付いた。1995年って、今から10年前だ。【島とクジラと女をめぐる断片】が本屋に並んでいるのを見たけど買わなかったのは、つい二、三年前のような気がしていたのだ。まあ、10年前じゃ仕方ないかも知れない。でもさ、古書がそんなに高値になるくらいニーズのある本なら、再版すれば売れそうなのだが、どうなのだろう。
 

 
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by leea_blog | 2005-10-31 00:41 | Comments(0)