2018年 04月 21日 ( 1 )

江戸川乱歩「影男」あらすじ



江戸川乱歩を再読しています。

過去日記にも、

「押絵と旅する男」、

「虫」、

「黒蜥蜴」、

「人でなしの恋」、など、

乱歩作品をご紹介しております。


ご興味をお持ちになった方は、

ブログ内検索をしてみてくださいまし。




今日は、「影男」をご紹介します。


「影男」や、「孤島の鬼」は、

「読んだことは無いけれど、筋肉少女帯の歌で知っている」、

という方も多いと思います。


「パレードの日、影男を密かに消せ!」、というタイトルの歌。


スモックを着ていた頃から
心に影男が住んでいた
気づかれぬよう
背中越しに
密かに消せ
パレードの中。。。。。


↑、

という歌です。


歌詞が、江戸川乱歩の影男に忠実かと言うと、

全くそんなことはなく、

大槻ケンヂワールドになっております。



そのようなわけで、

この歌を聞いて、

何となく推測出来るような気がして、

小説「影男」を読まずに終わるのは、

もったいない!


江戸川乱歩は、

怪人二十面相、黒蜥蜴、人間豹、その他、多くの、

個性が際立ち過ぎる犯罪者を次々と世に送り出してきました。


影男も、

その一人です。


彼らは、犯罪の哲学と美学が有り、

乱歩の、見世物小屋かと思う絶妙な語り口にのせられて、

時代を越えてファンを生み出しています。


犯罪トリックは、現代では、

警察の捜査技術も進歩して、

解決が可能な物が多いのですが、

それでも、

「当時はこうだったのだろうな」と、

活写される当時の風俗とあいまって、

レトロな味わいを出しております。







影男は、
沢山の名前と顔を持ち、
資金力にものを言わせて行動し、
悪事・奸計に関してはもはや天才です。

主な収入源は、「ゆすり」。



ーーーー

手袋を裏返すように、人間を裏返すと、そこには思いもよらない奇怪な臓物が附着していた。かれはそういう裏返しの人間を見ることに、こよなき興味を持った。

ーーーーー


影男を突き動かしているのは、
裏返しの人間を見る、飽くなき探求欲です。



この探求欲には、副産物が有りました。裕福な人間の裏側を見た時には、それを武器として、相手から多額の金銭をゆすり取ります。
探求にはずいぶん元手がかかるけれども、ゆすりによって、その何倍もの収入を得ています。

他にも、その探求に依って得た資料にもとづいて、怪奇犯罪小説を書き、名を成してもいます。



長編小説「影男」は、目立った特徴も無い一人の男が、ホテルに入り、そのまま支配人室に踏み込んでいくところから始まります。

ーーー

「来ているね?」
やせ形の男がニヤッと笑ってたずねた。
「うん、来ている。もう始まっているところだよ」
「じゃあ、あのへやへ行くよ」
「いいとも。見つかりっこはないが、せいぜい用心してね」

ーーーーー


一頁目から、こうした、読者の探究心をあおっていく展開です。

「暇だから何か読むか」程度の人でも、

ついつい読んでしまいます。


誰が来ているのか? 何が始まっているのか?

秘密の会合があるのか?

それにしては、この男は見つかってはいけないようだ。

何だろう、と、

読者は無意識に頭に思い描きます。



江戸川乱歩は、

こうした、読者をあおりまくる筆法が得意です。


推理小説というジャンルで名を成していますからね。


文中に、「一体どうなるのでしょうか」のような、

紙芝居屋が集まった子供たちの興味をかき立てるのに似た、

文章が差し挟まれることも有ります。


読者は色々に想像しながら読みますが、

乱歩の凄いところは、

「読者の想像の上を行く」展開を提示し続けるところです。



ただ、乱歩の作品の魅力は、

「推理小説」、「犯罪小説」というよりは、

その「強い猟奇性」にあるのではないでしょうか。



「猟奇」というと隔靴掻痒ならば、

ずばり「変態性欲」と言えましょう。



短編「虫」は、変態性欲のオンパレードです。


猟奇味を出すために、「変態性欲」を小道具に使う作家は多いながら、

乱歩は、「それ抜きに話を進める気はない」、とでも言うように、

湿度を持って猟奇・変態趣味な暗室に読者をいざないます。



乱歩ワールドは、

純文学と、

当時の変態成人雑誌の、

中間に存在するのです。



さて「影男」ですが、

冒頭の痩せた男は、主人公の影男で、

誰が来ているかと言うと、

S県随一の大富豪にして代議士。

何が始まっているかというと、

SMプレイ。

影男は、

その部屋の隣の押し入れからその行為を覗き、

写真に収め、多額の金銭をゆすり取るのでした。




そうした、人間の裏側の探求、という趣味と、

ゆすり、作品化、という実益を楽しんでいる影男に、

「殺人請負会社」が密かに接触を図ってきます。



犯罪小説家として人気を得ている影男の、頭の良さに感心した須原という男が、

「殺人請負会社」の顧問として雇いたいというのです。


以下は、須原が自分の会社を説明する場面から。



ーーーー

「だから、大金持ちばかりをねらうのです。社会的地位が高くても、案外、人を殺したがっているのがあるものですよ。金があり、地位があるだけに、自分では殺せない。自分には絶対に迷惑のかからない方法があれば、殺したいという虫のいい考えですね。ほんとうのことをいうと、これはだれでも持っている殺人本能というやつじゃないでしょうか。ただ、道徳でこれを押さえているのです。いや、たいていの人は、殺したいけれども、殺せば自分が社会的の制裁を受ける。つまり、法律によって罰せられる。それがこわさにがまんをするくせが、遠い先祖以来、ついてしまっているのですね。本心のそこのそこをいえば、誰だって殺したい相手のひとりやふたりはあるものですよ。犯罪映画やチャンバラ映画を見て楽しめるのは、そういう潜在意識のはけ口になるからですね。
 そういうわけで、地位のある大金持ちの方が、なにかといえばすぐにジャックナイフやピストルを出すよた者なんかに比べて、この殺人願望がはるかに強いのです。だから、かれらは絶対安全とわかれば、かねはいくらでM出します。金では計算ができないほど強い欲望なのですからね。そこで、ぼくらの会社の営業がじゅうぶんなりたつというわけですよ」

ーーーー



頭と技術があれば、いつの時代でも大もうけ出来そうな商売ですね。


影男は顧問となることを承知します。


振興成金のx氏から、困難な殺人依頼がありました。

若い美人の愛人が、実はx氏を愛していなくて、若い男に入れあげていた、つまり騙された口惜しさに、愛人を殺して欲しいというのです。

金で買えるのは「愛」ではなくて「愛のフリ」でしかないのですが、

振興成金だけに、その辺が理解出来ずに、「騙されていた」と愛人を憎む、

何とも虫のいい話です。。。。



X氏の注文は、自分は絶対に安全な方法で、

自分が手を下すのではなく、その場にいるのでもなく、

しかも愛人がなぶり殺しになるのを見たい、というものでした。

影男は、須原に、名案を授けます。




案件は、無事終了します。


が、案を授けた影男は、自分の殺人案が実現された報告を受け、実に嫌な気持ちになります。


影男は、人間の裏側を探求するのが好きながら、

じわじわと殺すような殺人をしていた訳ではありません。

ゆすりと殺人は、違うのです。

  ↑
影男は、殺人淫楽症というわけでもなく、

良い人の一面も持っています。



嫌な気持ちの憂さはらしに、多数の名と顔を持つ自分の中の、遊蕩紳士になります。

犯罪小説家としても時代の寵児で、遊蕩家としても、稀代の遊蕩児です。

何をやっても、とことんまで突き詰めるタイプなのですね。



そうした遊蕩のある晩。

銀座のキャバレーの最上の客席を占領していました。

京の祇園から呼び寄せただらり帯の舞子、柳橋の江戸前のねえさんたち、西洋道化師に扮装した幇間、キャバレーの軽装美人、

それら大勢のきらびやかな色彩に取り囲まれて、酒杯を重ね、

女達の和洋とりどりの冗談に応酬し、舌頭の火花に興じていました。


フロアでは金粉アクロバットショーが繰り広げられ、

客席からはテープ花火がポンポンと発射され、

無数の巨大なゴム風船が五色のクラゲの群のように空間を舞い、

はでなバンドの気違いめいた奏楽が、

ギラギラした色彩の混乱と相応じて、場内数百人の男女を狂気の陶酔に導いていました。


当時の日本としては、これ以上無い遊蕩の真っ最中でした。


ひとりの白髪白髯の老人が、影男の耳に口をつけんばかりに、

同じ事を繰り返して囁きました。


「つまらないですね、こんなもの。たいくつですね。さびしいですね。

あなたお金持ちでしょう。そんなら、こんなものより百倍すばらしいものがあるんですがね」



これだけ金と人を動員し、数百人が陶酔する相乗効果のまっただなかに、

謎の老人のことば。

影男は、好奇心をそそられます。


「これは絶対に秘密ですよ。わかりましたか。わしは、三日というもの、あんたのあとをつけて、じゅうぶん観察した。そして、この人ならばだいじょうぶと考えて、話しかけたのです。わしは高級客引きを専門にやっている者です。名前は申しません。あんたのお名前も聞きません。この取引には、名前など必要がないのです。あんたのほうでは五十万円の現金を出せばいいのだし、わしのほうではその場所へご案内すればいいのですからね」



この当時の五十万は、どの位の価値なのか。

この後に出てくる、資産家、河波良斎、

戦後成金として世に知られ、長者番付の三十位までに入るほどの資産家ですが、

彼の当座預金が五百万、と出てきます。

そう考えると、50万の遊蕩が、どれだけ高額か、想像ができます。



白髪の老人の、ほとんどはったりではないか、と思うような囁き。

読者も、どのようなものか、想像しつつ、

人生の裏の裏を探求することが生涯をかけた欲求の影男を、

満足させる遊蕩を、果たして準備出来るのか?

無理ではないか?

と、思う訳です。



ところが。


乱歩は凄い。


高級客引きを使って、

表の遊蕩にはもう飽き飽きしていそうな大金持ちを選んで提供する、

秘密の娯楽とは。

スリルとサスペンス、別世界でありました。



種を明かせば、

とてつもないパノラマなのでした。

影男のような海千山千の天才肌を満足させるパノラマを作った男も、

通常の業者ではない、

金と才能がはみ出して世間では通用しなくなっている人でした!


と、ここまでは、

ほんの半分。。。。


お終いまで書いたところで、

パソコンの電源が抜けて、

消えてしまいました。。。。


とほほ。。。


続きは後日!!!



























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by leea_blog | 2018-04-21 00:53 | Comments(0)